こんにちは、サイオステクノロジーの中谷です。
2024年9月24~2024年9月25日に、アメリカ・ニューヨークで開催されたGrafana ObservabilityCON2024に参加しました。
このイベントはほぼ満員の大盛況で、会場内では終始活発な議論や質問が飛び交っていました。様々な企業が自社のユースケースを紹介し、なぜ導入に踏み切ったのか、そしてどのような成果を上げたのかを熱く語りました。このブログでは、いくつかの事例をご紹介したいと思います。
1. キーノート
オープニングキーノートでは、Grafana Cloudがどのように簡単かつ迅速にObservabilityを体験できるかを強調しました。また、ログ、メトリクス、トレースの統合管理や、AI/ML機能を活用したシステム監視データの自動解析および問題の早期検出といった、Grafana LGTMスタックの最新機能も紹介されました。
BlackRockおよびNVIDIAの担当者がそれぞれ自社の事例を紹介し、大規模システムの監視にGrafana Cloudを導入することで、観測データを効果的に管理し、迅速な問題解決を可能にしたといった、Grafana Cloudならではの利点を共有しました。
所感:AI/ML機能の追加により、従来の監視システムの限界が大きく改善されるのではないかと感じました。BlackRockとNVIDIAの事例からは、Grafana Cloudの柔軟性、スケーラビリティ、そしてコスト削減効果が特に印象に残りました。これは多くの企業にとって有益な情報だと思います。新技術の導入には学習コストがかかり、トレーニングやシステムの最適化が必要という課題もありますが、監視の効率化が期待できると感じました。
2. SailPoint社のGrafana Cloud活用について
Grafana Cloudの導入理由:観測データ(メトリクスなど)のボリューム増大に伴い、運用やコスト管理の課題が発生したため、コスト効率やスケーラビリティに優れたGrafana Cloudを導入し、コスト削減とシステムのパフォーマンス向上を実現しました。
成果:Grafana Cloudのスケーラビリティを活用することで、増加し続けるメトリクスデータに対応し、パフォーマンスの低下や過負荷を防ぐことができ、運用の一元化による安定性の向上に寄与しました。また、データの効率的な収集と保存が可能となり、自動化による人的コストや管理コストの削減も実現しました。
所感:スケーリングに伴うObservabilityの課題に対するアプローチとして、Grafana Cloudの柔軟性やコストパフォーマンスが非常に有効であると感じました。日本の企業も同様の課題に直面しているため、このユースケースをブログ化して発信していきたいと思います。一方で、日本ではいまだにオンプレミス版にこだわる企業が多いため、Grafana Cloudをどのように促進していくかが、今後の課題でもあります。
3. Planet社のGrafana Cloud導入
Grafana Cloudの導入経緯: Splunk、SignalFx、Stackdriverなどを使用して監視業務を行ってきましたが、分散したツールを使った管理は非効率でコストがかかり、メトリクス、トレース、ログの一元管理が難しかったです。複数のツール間の統合が不十分であり、効率性やパフォーマンスにも影響を与えていました。
成果:Mimir、Tempo、Lokiを採用し、Mimirによる大規模なメトリクス管理、Tempoによる分散トレース管理、Lokiによる効率的なログ管理を実現しました。その結果、パフォーマンス向上、スケーラビリティの確保、コスト削減ができました。
所感:オンプレミスとハイブリッドクラウドの両方を利用してログとメトリクスを管理している多くの企業にとって、システムが膨らむことで管理が難しくなり、コストがかかることは大きな課題です。Planetの取り組みは非常に参考になると感じました。特に、フルマネージドのGrafana Cloudへの移行によって得られるコスト削減と運用の簡素化は大きなメリットです。他の企業にとっても、このようなフルマネージドのソリューションは運用の最適化に役立つと思います。
4. パネルディスカッション
登壇者:Frank Guerrera (Pegasystems CTO)、Neil Wilson(LexisNexis Risk Solutions Director)、Wayne Jin(Grafana VP)
Frank Guerrera:Pegasystems社がObservabilityを導入した目的は、システムの拡張時に安定性と拡張性を維持しつつ、運用効率を向上させコストを抑えることでした。また、Observabilityの導入は単なる技術的選択ではなく、チーム全体に浸透し、日々のオペレーションの中心となるよう意識改革が必要だと考えています。
Neil Wilson: LexisNexisでは、Observabilityは単なるシステム監視ではなく、全体的なビジネス戦略の一環として位置づけられています。複雑なシステムが可視化されることで、エンジニアは迅速に問題を特定し解決でき、チーム全体の生産性が向上します。また、Observabilityは組織文化やチームのモチベーションにも寄与し、意思決定が迅速かつ的確になることでチームの自信が高まると述べました。
Wayne Jin:Grafana Labsの製品マーケティングの視点から、Observabilityの価値をどのようにビジネス全体に広げるかについて語りました。Observabilityは、単なる技術的なツールセットではなく、経営層にとっても価値のあるビジネス資産であることを説明し、技術とビジネスの間をつなぐ役割が必要と強調しました。
所感:ディスカッションでは、Observabilityは単にシステム監視やパフォーマンス向上のためのツールではなく、企業の戦略的資産であることが強調されました。パネリストは、Observabilityが透明性を保ちながら、複雑な問題の解決に「洞察」を提供するものだと考えていました。ビジネスの成長や変化に応じて、Observabilityの重要性がますます高まっています。これは、技術基盤を強化するために欠かせない要素です。
今後、企業がObservabilityを導入・活用する際には、技術チームだけでなく経営層やビジネスサイドにもその価値を理解させる必要があると思います。
5. IGグループのGrafana Cloud導入
Grafana Cloudの導入経緯:IG Groupは独自の監視ツールとオープンソースツールを使用しており、それぞれが別々に機能していたため、Observability性が低く、データの集約や分析が困難で、運用効率も悪かったです。
成果:Grafana Cloud Metrics、Grafana Cloud Traces、OpenTelemetryを導入し、分散した監視ソリューションを一元化し、全体の監視とトラブルシューティングが容易になり、エンジニアリングチームはデータに基づいた意思決定ができ、運用効率が改善され、迅速に問題解決ができるようになりました。
所感:IG Groupの事例から、Observalilityを導入することでシステム全体の効率化が図れることがわかりました。複数のツールが混在する環境でも、統一されたアプローチを取ることで、チーム全体がデータを活用しやすくなり、組織の意識改善につながりました。これは、他の企業にとっても大いに参考になると思います。
6. Unity TechnologiesのGrafana Mimirの活用について
課題:リアルタイム3Dコンテンツのリーディングプラットフォームの開発では、急増するメトリクスデータに対するスケーラビリティが欠如していました。さらに、複数のメトリクスバックエンドを使用していたため、データの管理や統合が困難で、SaaSプロバイダーに依存することでコスト削減も課題となりました。
成果:メトリクスバックエンドをThanosからCortexを経てGrafana Mimirに移行し、膨大なメトリクスデータを柔軟に対応できました。LGTMスタックに移行することによって、数百万ドルのコスト削減を実現しました。
所感:Grafana Mimirへの移行によって、データ管理が効率になり、コスト削減に繋がり、急成長するビジネスが直面するデータ膨張の課題を克服することができました。同じような課題を抱える日本の企業に積極的に紹介していきたいと思います。
7. ASAPPのGrafana Cloud利用
導入経緯:顧客センターの効率を高め、顧客満足度や開発チームの生産性を向上させるために、Observalilityを強化する必要があったからです。
結果: Gitベースのプロセスを導入し、Kubernetes、Argo、Go、Pythonを活用して、ダッシュボードの作成とGrafana Cloudへのインポートを迅速化しました。また、新しいワークフローにより、ダッシュボード作成の時間が大幅に短縮され、開発者の作業効率が向上しました。
所感:ASAPPの事例は、最新の技術を活用して開発者の生産性を向上させる方法を示しています。Grafana Cloudの導入により、Observalilityが強化され、ダッシュボード作成の効率が向上したことは、他の企業にとっても大いに参考になります。
全体所感:2日間のイベントに参加し、最新の技術やユースケースについて多くの貴重な情報を得ることができて、本当に良かったです。特にObservabilityの分野では、データの可視化やリアルタイム分析がビジネスにどれほど役立つかを実感しました。さまざまな業界の知見が共有され、データがサイロ化されている問題を解消することが、全体の生産性向上につながるという話が印象に残りました。
さらに、AIや機械学習の活用が進むことで、データ解析や予測がよりスムーズになるのではないか感じました。これにより、企業はより迅速に意思決定を行い、競争力を維持することができると思います。今後は、技術導入によるビジネスバリューを示すことが、マーケティングにとって重要な課題であると感じました。
このイベントを通じて、お客様が直面している課題に対する新たな解決策やアプローチのヒントを得ることができ、改めて積極的に新しい技術を取り入れていく必要性と重要性を強く感じています。