こんにちは!技術部のツカサです。
今回は第二回になります。このセミナーの本丸と言っても過言ではない経済産業省の方のお話をまとめました。
発表2:2025年の崖問題とDX推進に向けた政策展開
発表者
佐藤 慎二郎 様
経済産業省
商務情報政策局
課長補佐
発表レポート
DXの重要性
現在多くの経営者がデジタル競争に勝利するためDXの必要性について理解はしているが実際のビジネス変革には繋がっていないのが現状
そもそもデジタル競争とはどんなものなのか?
- Amazon.com
元々は書籍の通信販売だったが、「ロング・テール」にフォーカスし、デジタル企業へと変革 - Airbnb
B2Bモデルだったホテル(宿泊業)をデジタル化することによってB2Cモデルに変革 - Uber
デジタル化によって輸送を個人化することに成功 - 米国航空会社
機内端末を撤去し顧客個人端末経由でサービスを提供することによってサービス品質の向上とコスト削減
上記の例のように先端技術は応用を模索する段階から完成度を高め、実用する段階に移行している。
日本でもAmazon GoのようなサービスをJR東日本で実証実験を行っている。
数年、数十年前にここまでスマホが普及すると予測できただろうか?クラウドの普及も目覚ましいものがある、そんな事前に想定することが難しい領域での競争にシフトすることがポイントではないかと締めくくっておりました。
DXレポートの概要:2025年の崖
皆さんは経済産業省が警鐘を鳴らしている「2025年の崖」という言葉をご存知でしょうか?
私もさわりしかしなかったのですが佐藤氏が丁寧に説明してくださいました。
IT関連費用
現在日本ではIT関連費用の80%が現行ビジネスの維持(ラン・ザ・ビジネス)に当てられています。
「攻めのIT」だったり「攻めの情シス」等の言葉も一時期流行りましたがそもそも「守り」とはシステムの維持であり、「攻め」は新サービスの開発だったり事業内容の拡大であるべきです。
そもそも「攻め」に転じる予算が2割しか無いのに攻めきるのは難しい状態にあります。
2025年の崖
本題ですがなぜ2025年に崖から落ちることになるのでしょうか?
これには様々な要因があります。
- 経営面
- データを活用しきれずDXを実現できない
- 市場の変化に対応出来ずデジタル競争の敗者に
- システム維持費が高額化しIT予算の9割以上に
- 保守運用者が退職等で不在になり、事故/災害によるリスクの高まり
- 人材面
- 2015年でIT人材不足約17万人
- 2025年にはIT人材不足約43万人と試算
- メインフレーム保守者の退職・高齢化
- 古いプログラミング言語を熟知する人材の減少
- 技術面
- 2014年:WIN XPサポート終了
- 2020年:WIN 7サポート終了
- 2020年:5Gの実用化/AIの一般利用進展
- 2024年:固定電話網PSTN終了
- 2025年:SAP ERPサポート終了
これだけのことが2025年までに発生します。
2015年時点で21年以上動き続けている基幹系システムが全体の2割を締めているこの状況、移行するのは現実的ではなく業務自体の見直しを行い作り直すくらいの気概がなければ今後の変化について行けなくなると語られました。
既存システム刷新の難しさ
企業の中には自社で利用しているシステムに問題があると認識していない企業もあると警鐘を鳴らします。
そもそも今現在日常的に活用出来ているためシステムがレガシー化していることに自覚できないのです。
更にレガシー化を自覚したとして抜本的な解決をするためには長い期間と巨額な費用を要する上に失敗のリスクまであるので着手しにくくなっています。
ベンダー企業からみてもユーザ企業のシステムにレガシー特有の問題があることは分かりにくいです。
というのはレガシー化していることにユーザ企業が自覚していない状態でRFPが出されている場合特に記載が無く、結果見積り金額との乖離が発生します。レガシー問題への対応作業は長期化するため赤字案件となり最悪の場合係争や訴訟に発展するケースも見られます。
ではどうしたら良いのかについても経済産業省では熟考しており以下のように提案しております。
- 情報試算の現状を分析/評価し、仕分けを実施しながら、戦略的なシステム刷新を推進する
今後の展望として以下のように示されました。
DX推進ガイドラインとDX推進指標の策定
経済産業省から「DX推進ガイドライン」が2018/12/12に公開されております。
また「DX推進指標」の策定も行っており、2019/07に公開予定となっております。
DX推進ガイドライン
DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすることを補助するガイドライン
DX推進指標
経営者自らがリーダーシップを取り持続的な経営改革を行うための手段としてDXを取り入れる際にDX推進指標を用いて気づきの機会が得られ、アクションにつなげていくためのツールとして位置づけされています。
- DXへの取組についてあるべき姿と現状とのギャップ、あるべき姿に向けた対応策が明確になり、CEOと事業部門DX推進部門、情報システム部門に共有される。
- 現状を放置した場合の経営リスクと対応した場合の経営メリットが明確になるのでその後の経営上のアクションを促すことに繋がる。
- CEOが理解できる報告レベルにする。
- 診断結果のデータが多数集まれば業界内での自社のいち付を経営者に示すことも可能となる。
各企業それぞれの方針があるためあくまでガイドラインと指標となっておりルールにはしたくないという思いがあるようです。