可知豊の『 わかっておきたい、オープンソースライセンス』: 第1回 著作権とライセンスをわかっておきたい

 今回のゲストブログは、オープンソースライセンスのスペシャリストとしておなじみの可知豊さんに、投稿いただきました。今回から『 わかっておきたい、オープンソースライセンス』と題して、3回に渡って、解説いただきます。第1回目は、オープンソースライセンスを理解する上で基礎知識となる、著作権とライセンスについてです。

情報システムの構築・運用で不可欠な存在となったオープンソースソフトウェア(OSS)。クラウド環境でも、至る所で使われています。流行の機械学習の分野でも、大きな存在感を示しています。

なぜOSSは、こんなふうに活用できるのでしょうか。それを理解するには、OSSのライセンスの理解が欠かせません。そこで、この記事では、3回にわたってオープンソースのライセンスについて、ざっくりと解説していきます。
第1回は、オープンソースライセンスを理解する上で基礎知識となる、著作権とライセンスについて取り上げます。

オープンソースライセンスの土台は、著作権とライセンス

OSSに限らずソフトウェアのライセンスは、著作権の仕組みの上で働いています。著作権というフレームワークの上に実装されていると考えると、分かりやすいでしょう。ですので、オープンソースライセンスを理解するには、著作権とソフトウェアライセンスの理解が不可欠です。

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図:OSSライセンスの土台

 

では最初に、著作権を理解するポイントを紹介しましょう。

「著作権」とは、ひじょうに大ざっぱに言えば、作品をどのように公開するか、どのように利用するかを作者が決定する権利です。この権利は、どこかに申請したり登録したりしなくても、自動的に発生するとされています。

そして、著作物の使い道では、「利用」と「使用」を分けて考えます。

著作物の「利用」は、印刷したり、配布したりといった使い方を指します。例えば、書籍や雑誌であれば、印刷・出版することが「利用」になります。

ところが、本を読むことは利用にはあたりません。著作権の考え方では、このような使い方を「使用」として区別します。使用については、著作権者の許可は必要なく自由に行えます。また、利用についても、教育や引用などの特定の用途であれば自由に行えます。

著作権の話題となると、「勝手に使ってはいけない」という禁止の話になりがちですが、自由に使える部分もあるということを覚えておいてください。

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図:著作物の利用と使用

 

ライセンスは利用許可

著作物を利用するには、作者から著作権の一部を譲り受けるか、著作権者の利用許可が必要になります。この著作物の利用許可が「ライセンス」(License)です。

ドライバーライセンスと言えば、自動車免許です。殺しのライセンスを持つのは、ジェームズ・ボンドです。

著作物に対するライセンスとは、”一定の条件に従えば、その著作物を指定の範囲で利用してもいい”という利用許可です。たとえば、”1万部まで印刷できる”とか”日本国内でだけ出版できる”いった条件があり得ます。ライセンスは、著作権以外にも、特許やブランドなどにも使われます。

そして、ソフトウェアでもライセンスは幅広く使われています。ソフトウェアは、著作権法上の著作物に当たるため、それを利用する場合は、著作権者の許可が必要になるからです。

ただし、ライセンスと言っても契約になるとは限りません。ライセンスを有効にするための手続きとして、契約を締結する場合が大半です。しかし、オープンソースソフトウェアのライセンスでは、多くの場合、契約を締結しないで許可だけを発行しています。

ソフトウェアライセンスの働き

では、ソフトウェアライセンスは、どのように機能しているのでしょうか。

著作物であるソフトウェアでは、複製・配布・改変について「利用」許可が必要になります。
ソフトウェアの複製は、インターネットからのダウンロードやサーバーへのインストールが該当します。ソフトウェアの配布は、販売したり、配備することに当たります。ソフトウェアの改変は、機能を変更したり追加することに当たります。

  • 複製:ソフトウェアをコピーする
  • 配布:ソフトウェアを他の人に渡す
  • 改変:ソフトウェアを修正する

一般的な商用ソフトウェアのライセンスでは、このような許可を与えるために、ロイヤルティを請求したり、使用の一部を制限したりしています。コンピュータにインストールできますが、改変は許可されていません。また、本来自由にできるリバースエンジニアリングなどを制限します。

何より、一般的な商用ソフトウェアのライセンスでは、実行形式について許可を与えます。ソースコード自体は、閲覧・配布・改変が制限されている場合が大半でしょう。スマホやPCのアプリを購入した場合、それはプログラムの実行形式を所有したのではなく、その実行許可にお金を払っているのです。

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図:ライセンスを得ると使える範囲が変わる

OSSのライセンスとは?

これに対して、OSSのライセンスは、”一定の条件に従えば”、誰でも自由にソースコードの利用を許可します。自由に利用できるとなっているので、複製も配布も改変も自由にできます。何より、実行形式ではなく、ソースコードを自由に利用できるのです。

では、「一定の条件」とは、どのようなものでしょうか。これは個々のオープンソースライセンスに寄って細部が異なりますので、詳細は次回以降に解説していきたいと思いますが、どのオープンソースライセンスも、「オープンソースの定義」(Open Source Definition https://www.opensource.jp/osd/osd-japanese.html)に従っています。

ここには、3つの権利と6つの条件が書かれています。ここで重要なのは、次の3つの権利です。

オープンソースの権利

  • 利用者が、ソースコードのコピーを作り、それを配布できる
  • 利用者が、ソースコードのソースコードを入手できる
  • 利用者が、ソースコードを改変できる

そして、詳細はライセンスごとに異なっていますが、最低でも次の条件を備えるとしています。

  • 作者のソースコードの完全性を維持すること
  • 個人もしくは団体に対する差別をしないこと
  • 使用分野に対する差別をしないこと
  • 再配布時には追加ライセンスを必要としないこと
  • 特定の製品に固有なライセンスを使用しないこと
  • 他のソフトウェアに対する干渉をしないこと

「個人もしくは団体を差別しない」ので、特定の国で利用禁止とはできません。「使用分野に対する差別をしない」ので、戦争には利用禁止とできません。「再配布時には追加ライセンスを必要としない」ので、”別のライセンスを購入しないと利用不可”とはできません。

というわけで、オープンソースソフトウェアライセンスのベースとなる、著作権とソフトウェアライセンスについて、ざっくりと紹介しました。

一般的な商用ソフトウェアのライセンスも、オープンソースソフトウェアのライセンスも、著作権をベースにしています。しかし、一般的な商用ソフトウェアでは、できる限りユーザーの利用を制限するのに対して、OSSのライセンスは、ソースコードの再利用と共同開発を促進するため、できる限りソフトウェアの複製・配布・改変を制限しないようになっているのです。

次回(第2回)は、たくさんあるオープンソースライセンスを理解するポイントを解説するとともに、代表的なものを紹介します。お楽しみに。

 

column-a04-010著者:
可知豊
テクニカルライター
豊田高専 電気工学科卒。

小学生のときにスターウォーズを見て以来、SFと映画とコンピュータに目覚めて大人になる。
以前は、パソコンの解説書を書いて収入の大半を得ていた。そのほかに、パソコンのコンサルタントやインストラクター、メーカーでパソコンを設計したり、秋葉原でPCの説明員をしてたこともある。

 ・オープンソース・ライセンスの談話室:https://www.catch.jp/oss-license/
 ・知る、読む、使う! オープンソースライセンス:https://tatsu-zine.com/books/osslicense

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