はじめに
これまでマネージドKubernetesサービス比較調査として15記事ほど連載してきましたが、今回はその総集編として、各連載の内容からRKSのPros/Consを簡単にまとめてみました。
これまでの連載記事のリンクを各項目の表題に設定しているため、詳細については各連載記事をご確認ください。
今回はこれまでの連載記事よりRKSのPros/Consのまとめを作成していますが、Pros/Consの分析結果からの考察内容については別記事にて纏めたいと思います。
本連載についてはリンクページを用意していますため、概要や連載記事は下記URLからご確認ください。
RKSを知る! 概要&連載リンク集
RKS Pros/Cons分析
WebUI
Pros
ホーム画面からすべてのサービス、機能を選択することができるため、利用が簡易的であり操作に迷わない点が強みであると思います。
RKS独自のサービスが少なく、WebUIの構成がシンプルで視覚的に確認しやすいため、RKSを利用開始したその日からクラスタ作成まで実施することが可能になります。
Cons
WebUIは日本語非対応であるため、ある程度翻訳ツールを駆使する必要があります。
また、RKSで稼働しているリソースはWebUIからはすべてを確認することができないため、詳細な情報はRKSクラスタにアクセスして確認する必要があります。
RKSを知る! 連載第9回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 – WebUI編
料金
Pros
他のマネージドKuberneteサービスに比べ、同等性能の場合、RKSの方が料金を安く抑えることが可能です。
利用可能なリソースが少ない分、料金の計算が行いやすいのも他のマネージドKuberneteサービスより強みに感じる点だと思います。
Cons
料金が記載されていないデータセンターがいくつか存在するため、詳しく料金を計算しようとした場合、Ridgeへの問い合わせが必要となります。
料金の支払い方法がドキュメントでは提示されておらず、2021年5月現在、料金支払い方法についてRidgeとやり取りを行わなければならないため、他のクラウドベンダよりワンステップ作業が増える可能性があります。
RKSを知る! 連載第10回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –料金編 —
クラスタ作成方法
Pros
RKSの仕様上、クラスタの設定項目が少ないため、GUIでのクラスタ構築難易度が非常に低いです。
また、APIを使用したクラスタ構築も可能なため、ある程度柔軟性を持ったクラスタ構築管理を実施することが出来ます。
Cons
他のクラウドベンダのようにクラスタ作成用のCLIツール等は存在せず、ネットワークの設定内容等を変更して構築するなどが出来ないため、ある程度決まり切ったクラスタしか構築することしかできません。
クラスタ構築難易度として低いのはあくまでもGUIのみであり、APIを利用する場合は公式のリファレンスを熟読した上でないと利用は難しいです。
RKSを知る! 連載第11回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –クラスター作成編
Node性能
Pros
他のマネージドKuberneteサービスでは不可能なvCPUやメモリサイズを1コアや1GiB単位で設定可能なデータセンターが存在するため、要件によって細かく性能を設定する必要がある場合は、RKSならば要件を実現ことが出来ます。
Cons
Nodeの性能はあくまでも提携先のデータセンターによって決まっているため、データセンターごとに利用可能なリソース値が異なります。
また、他のマネージドKuberneteサービスに比べ、リソースの設定可能上限が小さいため、大規模なKubernetesクラスタを構築することは難しいです。
RKSを知る! 連載第12回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –Node性能編
操作方法
Pros
WebUIでの挙げましたがとにかくGUIでは操作が簡易です。
CUIとしてはKuberntesCLIツールであるkubectlでの操作となるため、Kuberntesの基本操作のみで管理することができます。
Cons
GUIではリソースが一部のみしか管理できないため、GUIのみでRKSを操作するのは非現実的です。
CUIとしてはkubectlでRKSを操作するために、アクセストークン情報を認証が必要になるなど、管理面でのkubernetesの知識が無いと設定が難しいです。
RKSを知る! 連載第13回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –操作方法編
周辺サービス
Pros
取り扱っているサービスがコンテナ管理、およびコンテナオーケストレーションのみであるため、クラウドサービスとしての必要知識は少なく、コンテナ、およびKubernetesの基本知識があるならば、即使用することが可能となります。
Cons
クラウドサービスとして取り扱っているサービスがコンテナオーケストレーションのみであるため、クラウドサービスのみで運用環境を構築することが出来ず、オンプレミス環境のようにミドルウェア等を活用し、独自で環境を構成しなければなりません。
RKSを知る! 連載第14回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –クラウド別サービス編
CRI/CNI
Pros
CNIとしてWeaveNetを使用しており、他のマネージドKubernetesサービスのように専用のCNIではなく汎用的なCNIを使用しているため、詳細情報やエラー情報について調査しやすいです。
Cons
使用しているCRIやCNIはKubernetesで推奨されるものを使用しているため、特に弱みとされる点はありません。
RKSを知る! 連載第15回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –CRI/CNI編
kubernetesバージョン
Pros
他のマネージドKuberneteサービスに比べ、クラスタ内で使用しているKubernetesのバージョンアップのタイミングが遅いため、kubernetesバージョンアップに関し強みと言える点はありません。
Cons
RKSでは2021年5月時点で1.17~1.18までのバージョンのみサポートしており、より新しいバージョンである1.19~1.20はまだサポートされていません。
RKSを知る! 連載第16回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –kubernetesバージョン比較編
NodeOS
Pros
コンテナワークロード用のOSであるFlatcar Container Linuxを使用しているため、コンテナ動作に最適化された環境を構築段階にて提供されています。
Cons
OSの種別を変更することが出来ないため、要件に沿ったOSの変更やWindowsコンテナの実行を行うことはRKSでは出来ません。
RKSを知る! 連載第17回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –NodeOS編
ログ管理方法
Pros
RidgeCloudとしてログ管理を実施、およびサポートするサービスはなく、外部ツール外部ツール(Prometheus等)に依存する形となるため、 RKSとして強みと言える点はありません。
Cons
2021年5月時点にてRidgeCloudが提供しているマネージドログ管理サービスが存在しないため、ログ監視についてはRKSにて構築したクラスタ上にログ管理用のPodを展開する、ないし外部サービスにてログ管理機能を担保するなど、ユーザ独自で設定・構築する必要があります。
RKSを知る! 連載第18回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –ログ管理方法比較編
コンプライアンス適用状況
Pros
コンプライアンス適用状況はデータセンターによって異なるため、RKSとして明確に強みと言える点は存在しません。
Cons
コンプライアンス適用状況はデータセンターによって異なるため、必要なコンプライアンスが対象データセンターに適用されていない場合があります。
また、各データセンターにて取得しているコンプライアンスプログラムも他のマネージドKuberneteサービスに比べ、取得している数は少ないため、厳密なセキュリティポリシーが求められている場合に対応できない可能性があります。
RKSを知る! 連載第19回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –コンプライアンス適用状況編
サポート体制
Pros
RKSでのサポートは基本的に無料で、Ridge社の主要エンジニアが直接問い合わせ内容について、確認・回答を実施してくれる。
Cons
RKSでは24時間体制のヘルプデスクが存在せず、有償のサポートプランもないため、RKS起因の障害が発生したとしても即時対応してくれるか不明瞭です。
障害内容についてもRidge側で独断的に判断し障害レベルを決定するため、内部的に緊急であっても即日対応とならない可能性があります
RKSを知る! 連載第20回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –サポート体制編
監視
Pros
RidgeCloudとしてクラスタのログやメトリクスの監視を実施、およびサポートするサービスはなく、外部ツール(Prometheus等)に依存する形となるため、 RKSとして強みと言える点はありません。
Cons
2021年5月時点にてRidgeCloudが提供しているマネージド監視サービスが存在しないため、ログ・メトリクス監視を実施する場合、RKSクラスタ上に監視用Podを展開する、ないし外部サービスにて監視を実施する必要があります。
また、Nodeの死活監視は実施していますが監視情報の通知はサポートしていないため、何かしらの仕組みをユーザ側で用意する必要があります。
RKSを知る! 連載第21回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –監視編
拡張性
Pros
通常のKuberntesと同じくWoekerNodeのスケーリングすることが可能であり、GUIからの手動スケーリングも可能です。
また、RidgeCloudの機能としてNodeに障害が発生した場合は自動的にスケーリングする機能があり、Node障害時も性能を担保することが出来ます。
Cons
クラスタ構築後にNodeのインスタンスタイプ(性能)を変更することはできず、変更する場合はクラスタの再構成が必要となります。
また、ノードに障害が発生した場合は自動的にスケーリングされますがメール等での通知もなく、GUI上から確認することも出来ないため、障害の詳細についてはRKSクラスタにログ管理機能をユーザ自身が追加して確認する必要があります。
RKSを知る! 連載第22回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –拡張性編
可用性
Pros
24時間体制でRidgeCloudがクラスタを監視しており、Nodeに異常があった場合は自動復旧を行う機能が備わっているため、Node障害による可用性低下を防ぐことが出来ます。
Cons
クラスタの負荷状況に応じた自動スケーリングやNodeの地理的分散を実施することが出来ないため、外部からの攻撃による高負荷状況の可用性低下や大規模災害による物理的なNode障害に対応することが出来ません。
RKSを知る! 連載第23回目 :マネージドKubernetesサービス比較調査 –可用性編
あとがき
今回はマネージドKubernetesサービス比較調査の総集編として、各項目より内容を抜粋し、RKS
のPros/Consをまとめました。
比較調査も全15回に渡り、様々な調査を行ってきましたが、その調査を経て、RKSの全容が段々と解明できたのではないかと思います。
次回の記事では今回の分析結果を元にRKSのPros/Consの総評や考察内容を記事にしたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!