PS/SLの佐々木です。
2024/4/13, 14でWEB3/AI SUMMIT2024というイベントがあり参加してきました。
こちらはよくあるカンファレンス形式でテーマは表題通りWeb3関係がメインで、Web3の中でAIをどのように利用していくかというパネルディスカッションが多い印象でした。
こちらのイベントに今回参加してきたので内容を紹介したいと思います。
パネルディスカッションのテーマ
多かったパネルディスカッションのテーマは以下の通りです。
- 国内のWeb3の取り組み
- 海外のVCのトレンド
- Web3とAIの可能性
- ステーブルコイン
- Web3のマスアダプションに向けて必要なもの
- うまくいっている事例
- 全体を通して
国内のWeb3の取り組み
日本政府は暗号資産の税率の変化やDAOの法人格化、また会計での課題について現在の進捗と課題を話していました。
先日自民党議員の平さんがWeb3ホワイトペーパーにも出していましたが、2024年に暗号資産の課税方式が期末時価評価課税の対象から除外され、シンガポールやスイスに出て行ってしまった企業家が日本に戻ってきてくれることを期待するといっていました。
またDAOの法人化では現在の合同会社と同等の扱いができるように提言を出すとのことでした。
一方でキャピタルゲインの課税についての議論や暗号資産を寄付した場合などどのような控除が必要なのかといった議論はこれからだおっしゃっていました。
日本は最初に規制を強め徐々に整備を進めていて、これからな部分は多いものの世界でも進んだ市場を提供していくという力強いメッセージがありました。
日本企業の取り組みとしては大手IT企業では独自でウォレットを開発していたり、NFTを用いたスタンプラリーのようなプロダクトの開発を行っています。
また今後考えていることとしてはIPとコラボした取り組みやコミュニティへの貢献に関するプロダクト、フィールセーフのような仕組み作りを考えているという話がありました。
海外のVCのトレンド
海外のVCトレンドとしてはインフラレイヤーのプロジェクトへの投資が多い印象でした。
様々なL1, L2レイヤーのパブリックチェーンのプロジェクトがありますが、それぞれの相互運用性であったり、Dappsが開発されるにあたってのツールやDeveloperフレンドリーな開発体験を提供するための機能がまだまだ足りておらずこの問題には関心があるようでした。
ブースに出店していた海外のプロジェクトもこれらの問題を解決するためにチェーンから開発してより上位のレイヤーで起きている問題を解決しに行くといったアプローチをとっていることが多い印象でした。
またRWA(Real World Asset)によりコレクションやアンティークの流動性を高めたり、AI関連のプロダクトに関心があるようでした。
Web3とAIの可能性
AIの問題点からそれをWeb3で解決できるというのがセッション全体を通しての流れでした。
AIの問題点は以下の通りです。
- データが巨大企業に集まってしまっている
- 使用されているデータの信憑性
- アルゴリズムの不透明さ
- 結果に対しての検証が困難
- 企業のさじ加減でAIを使用できなくなる可能性も
これらの問題に対してWeb3ではデータやロジックには透明性があり、安全に使用できるのではないかとの見方がされています。
また方法の詳細は分かりませんが、出力の正しさを検証する際にゼロ知識証明を使用することができるのではないかとの意見がありました。
またP2Pの上で構築することで持続可能性も高く、だれもが安価にAIを使用できる未来を示唆している人もいました。
また現在はマシンパワーとデータ量で勝負する(物理で殴るという表現もされますが、、、)世界になってしまっていますが、アルゴリズムとデータがパブリックなものになってくれば誰もがAIを作れる世界線もありえ知恵やアイディアで勝負できるようになるかもしれません。
ステーブルコイン
異なるコイン間のインターオペーラビリティに関する問題と既存のPaymentサービスの差別化(少額決済がやりやすいとか)に関する議論や可能性について語られていましたが、いまひとつステーブルコインが便利な点がわかりませんでした。
国際送金に関しては手数料が安くなる理屈は理解できるのですが、例えばUSDCとJPYCに交換する手順の簡略化など今後行っていかないといけないんだろうと思いました。
Web3マスアダプションに向けて必要なもの
まず1点目がWalletについてです。
現在の見立てではユーザーがノンカストディアルウォレットを管理してアプリケーションにアクセスすることは考えにくいとされています。
ウォレットの必要性により現在ユーザーがWeb3アプリケーションに参画しにくくなっている(実際にEmailでログインとWalletログイン両方を備えたサービスでWalletログインを使用したユーザーはいなかった)というのは私自身も感じています。
しかしカストディアルウォレットを使用すると署名用のキーを握られてしまうことになるのでWeb3の理念的には微妙なのかなと思ってたり。
この問題に関しては問題提起のみで解決に関する議論やアイディアはなかったのでチャンスのある領域です。
2点目はチェーン間のインタオペーラビリティです。
現在非常に多くのチェーンがローンチされています。
しかしチェーン間でのデータやトークンのやり取りが非常に難しいという問題があります。
そのためユーザーや開発者はDappsが使用しているチェーンごとにWallet(複数チェーンをサポートしているWalletはありますが、ローンチされているすべてのチェーンに対応することは非常に難しい)を持ち、それぞれのトークンを管理するという煩雑さはユーザーのみならず開発者もやりずらいポイントになっています。
同一チェーンでDappを開発する場合にはチェーン内でのインタオペーラビリティは非常に強みになってくるのですが、様々なチェーンがローンチされている現在はそのメリットが薄まってしまっています。
ここに関しては規格を整備していくのかBridgeするアプリケーションを開発するのか様々なアプローチが考えられるところです。
これらによりユーザーはWeb3に参入しやすくなり、開発者は技術選定がしやすくなったり、Dappの開発が活発になるのではないかと考えられます。
うまくいっている事例
うまくいっている事例ではナイジェリアやアフリカ方面の話があり、自国の政治状態が不安定で自国通貨のボラリティがビットコインのボラリティよりも下回っている場合は資産を暗号資産に移している人が多いようでした。
またアフリカのほうでは銀行口座を持っている人の割合が少なく、また人口も増加しているためマスアダプションに向けてはかなり導入しやすい地域だといわれています。
このようにDefiの分野では導入が進んでいる場所もあるようです。
またチェーンがものすごいTVLをつけているといった話もありましたが、TVLを支えている技術や優位性が今一つまだ理解できておらず、今後個人的な調査課題とさせていただければと思います。
全体を通して
今後の展望や課題は上記で述べた通りで、様々なセッションがありましたが、議題の違いとアプローチの違いはあれどマスアダプションに向けてのボトルネックになっている場所の認識は大方同じように感じました。
個人的にもローンチされているチェーンが多すぎてキャッチアップは追いつかないし、チェーンを変えたくなった場合にどうすればよいかあまりわかっていないので新しいプロダクトの開発状況は今後もウォッチして何か動きがあればこちらで発信していきます。
イベント全体について
今回teamz様か主催しているイベントだったのですが、全体の雰囲気としては日本人と外国人が半分半分ぐらいな印象でした。
また登壇者に関しては2/3ぐらい外国人でほとんどのセッションも英語で行われていました。
しかしたくさんのリアルタイム自動翻訳機があり、精度もそこそこなので英語を聞きながら自動翻訳機を眺めていれば内容は大方問題なく理解できるレベルかと思いました。
またロビーでは朝からお酒やお菓子の提供がされていてDJが爆音で音楽をかけているという日本のイベントではあまり見ない光景で新鮮で非常に楽しかったです。
また私はいろんなブースを回るのが好きなのですが、今回の出展企業やプロジェクトは海外のものが多く(日本人のほうが少なかった)なぜ規制の厳しい日本に来ているのか質問したりプロダクトの説明を受けたりしました。
どうやら規制は厳しいがそれだけ参入障壁が高く、また個人ID(マイナンバー)が普及しきっていないのでチャンスはあると考えているようでした。
またIPが豊富に存在し、日本の規制当局も規制緩和に向けてかなり前向きにとらえていることが非常に好印象のようで、数年前に日本のWeb3企業がシンガポールやスイス拠点でやっているのを横目で見ていたので非常に新鮮な意見でした。
またビットコインの抽選会やハッカソン、VIP専用のエリアやセッションなども新鮮で2日間を通して非常に刺激を受けました。
来年度以降もイベントを開催するようなのでまた是非参加したいと思いました。
イベントロビー
登壇ステージ
協賛企業一覧(日本企業ほとんどない笑)
参考
自民党議員 平将明議員のHPに乗っているWeb3ホワイトペーパーのリンクを張っておきますので興味のある方は読んでみてください!