Drupal の創始者ドリース バイテルト氏のブログを日本語で紹介するコーナーです。
昨日、僕は Drupal Vienna で Drupal の概況プレゼンを発表した。スライドをシェアしたのに加えて、もう少し詳細情報を提供しようと思った。Drupal がどう進化しているか、Drupal は誰のためにあるのか、僕たちは何にフォーカスするべきだと僕が思っているか、といったことだ。
目次
Drupal は成長、変化している
基調講演は Drupal が成長しているのを説明することから始めた。ここ 1 年の間、コミュニティーに取り組もうとする姿勢が強まり、それによって Drupal 8 の普及がいっそう進んだのを僕たちは目の当たりにした。
2017 年 Drupal ビジネス調査(アンケート)も、これを裏付けている。239 名の Drupal エージェンシー経営陣から寄せられた回答によると、彼らにとって Drupal 8 はデファクト リリース(標準バージョン)になったことがわかる。また、ほとんどの Drupal 事業が成長していることも報告されている。
Drupal 7 から Drupal 8 への移行は完了していないが、Drupal 8 の革新は加速し続けている。僕たちは、拡張(貢献)モジュールのエコシステムが成熟する様子を見てきた。安定したモジュールの数は過去 1 年間で 2 倍以上になった。さらに、開発中のモジュールは 4,000 を超える。
成長に加えて、Drupal にかかわるベンダーとテクノロジーの両方とも様子が変わってきている。僕は基調講演で、ベンダーの状況に 3 つの主要な変化があることを指摘した。市場では「ローエンド」にあたる単一のブログ、ポートフォリオ サイト、パンフレットサイトは SaaS ツールを利用するのがいちばんだ。その「反対側」に位置するエンタープライズ ベンダーの大部分は、コンテンツ管理を超えてより大きなマーケティング スイートに移行している。そして最後に挙げるヘッドレス CMS の市場セグメントは急速に成長しており、一部のベンダーは前年比 500% の成長を遂げている。
また、Drupal を取り巻く技術環境にも大きな変化がある。すなわち、最新の JavaScript テクノロジーを利用する Drupal エージェンシーも増えている。たとえば、顧客のニーズに対応するために Node.js を使う Drupal エージェンシーは 50% を超える。
ベンダーとテクノロジーが進化している状況は Drupal にとっての機会がたくさんできることを意味するが、不確実性をもたらす可能性もある。 Drupal コミュニティーにいる多くの人々から意見を聞いたところ、Drupal 8 の長かった開発期間および普及サイクルと相まって、こうした市場と技術のトレンドはすべて、Drupal にとって、ひいては自分たちにとってどんな意味があるのだろうかと思いを巡らしている人たちがいることがはっきりした。
Drupal はもはやシンプルなサイトのためのものではない
過去 1 年の間、僕は DrupalCon Baltimore の基調講演でもこのブログでも、Drupal が意欲的なデジタル体験のためのものであると信じている理由を説明してきた。それでも、僕のいう「意欲的なデジタル体験」とはどんな意味なのかをさらに詳しく説明することには意味があると思う。Drupal は誰のためのものなのか。それを僕たちみんなが理解することが大事だ。というのも、それが僕たちの戦略を駆動するからであり、ひいては僕たちが集中して注力できるようになるからだ。
現在の Drupal は、もはや単純なサイトのためのものではないと僕は考えている。Drupal にとってのはまり役は、一定のカスタマイズや柔軟性が必要になるサイトやデジタル体験だ。僕はそれを「リッチネス(richness – 豊かさ)」と呼んでいる。
「意欲的」とは単なる「企業向け」をはるかに超える
この区別は重要だ。というのも、「意欲的(ambitious)」という言葉が「企業向け(enterprise)」といっしょにされてしまうのをよく見かけるからだ。Drupal が企業にピッタリだという点には僕も同意するが、個人的にはそういうカテゴリー化がいいと思ったことはない。Drupal を使っているのは大企業だけではないのだから。個人や小さなスタートアップ企業、大学、博物館、非営利組織だって、達成したいことは同じように意欲的であり得る。そして、Drupal は彼らにとって、すばらしいソリューションになり得るのだ。
その例として、50 の賃貸物件を管理している小規模ビジネスがあるとしよう。大きなトラフィック(リーチ)があるわけではないが、業務に対応するには、E コマース(電子商取引)システム、予約システム、カスタマー サポート ツールとの統合が必要になる。割り当てられた予算はせいぜい 5 万ドル(約 570 万円)といったところ。この(規模の)会社は「エンタープライズ ビジネス」とはみなされないだろう。それでも、Drupal なら、このユースケースにピッタリだ。多くの意味で、「非エンタープライズの意欲的なデジタル体験」は、Drupal エコシステムの大半を占めていることになる。プレゼンテーションでもはっきりと示したことだが、僕たちは、この人たちを置き去りにしたくはない。
小さめの組織が抱えるニーズに対応する
Drupal エコシステムの大部分は、中程度から高度なリッチネスを必要とするサイトを運営する組織だ。SaaS 構築者(提供企業)は彼らをサポートできないが、彼らとしても大企業並みに拡張する必要はない。この大部分の組織をどうやってサポートしたらいちばんいいだろうかと Drupal コミュニティーが検討を続けていくなかで、数多くの小規模 Drupal エージェンシーとエンドユーザーが有益だと指摘した点が 2 つあった。次のとおりだ。
- パワフルなサイト構築ツール。彼らは簡単に習得できて使いやすいサイト構築ツールを求めている。何十個もの拡張(貢献)モジュールをインストールしてあれこれ設定しなくてはならないようなものではない。彼らはまた、カスタムのコードをたくさん書くことを避けたがる。というのも、彼らのクライアントは予算規模が小さいからだ。サイト構築を改善するであろうツールの好例としては、Drupal に組み込まれる予定のレイアウト ビルダー(layout builder)、ワークスペース(workspaces)、メディア ライブラリー(media library)が挙げられる。また、Drupal 自体の管理用 UI の一部をよりパワフルかつ使いやすくするため、僕は、Drupal コアにモダンな JavaScript を追加することを提案した。
- アップデートとメンテナンスをもっと容易にすること。ひとつひとつの Drupal 8 サイトにとって、継続的な革新はプラスになるが、その分だけ頻繁にアップデートする必要がある。Drupal 8 の新しいリリース サイクルでは、パッチ リリースが毎月、そしてマイナー リリースが 6 か月ごとにある。それに加えて、組織(利用者企業)は貢献モジュールの不定期アップデートもこなさなくてはならない。さらに、サイトの更新はもっと複雑になっていることが多い。サードパーティー ライブラリーへの依存性もあるし、みんなが Composer を使えるわけではないからだ。自動アップデート機能は、たくさんの小規模なユーザー(組織)とエージェンシーにとっては途方もない恩恵となることだろう。というのも、彼らの Drupal 8 サイトにとっては、保守や更新は、あまりにも手作業が多く、複雑で、コストがかかりすぎる可能性があるからだ。
(こうした点に関する)いいニュースは、サイト構築ツールの改良も、アップデートとメンテナンスの簡素化も、共に進展してきているということだ。これらのトピックについて今後のブログ記事に注目していてほしい。それまでは、僕の基調講演の動画(22 分 10 秒から開始)を観てくれたらいい。スライドのファイルをダウンロードすることもできる。
Drupal の詳細については下記をご覧ください!
https://sios.jp/products/it/oss-drupal.html