ターゲット
- プログラミング学習者
- Windowsでこれから開発を行う開発者
- フロントエンドからバックエンドへ挑戦し始めたエンジニア
概要
こんにちは。サイオステクノロジーのはらちゃんです!連続で2本目のブログ執筆です。
WSLとGit Bash、2つの違いをメリットやデメリットを踏まえて解説します。
WSLでVS Codeの開発効率を上げることが気になる方は、こちらのブログをご覧ください。
はじめに
Windowsで開発を始めると、必ず出会う2つの黒い画面があります。
それがWSLとGit Bashです。 どちらもLinux風のコマンドが使えて一見似ていますが、その正体と得意なことは全く異なります。
間違ったツールを選ぶと、後々「やりたいことができない…」と遠回りしてしまうことも。
簡単に言うと、WSLは「Windows上で本物のLinuxを動かす」のに対し、Git Bashは「Windows上でLinuxのコマンドを擬似的に再現する」ものです。
この記事では、両者の根本的な違いからメリット・デメリットまでを徹底比較し、あなたがどちらを選ぶべきかの明確な指針を解説します。
根本的な違い
まず、両者の最も重要な違いを表で見てみましょう。
WSL (Windows Subsystem for Linux) | Git Bash | |
---|---|---|
OS環境 | 完全なLinuxカーネルが動作する仮想環境 | Windows上で動作するBashエミュレーター |
できること | Linuxでできることはほぼ全て可能 ・apt等のパッケージ管理 ・サーバーソフトの起動など | Git操作と基本的なUNIXコマンドが中心 |
パフォーマンス | Linuxファイルシステム内は高速 Windowsとのファイルやり取りは若干遅い | Windowsファイルシステム上で動作 そのため、ファイルアクセスは高速 |
リソース消費 | 比較的大きい(メモリ、CPU) | 軽量 |
WSLの特徴
- 完全なLinux環境:
apt
やyum
といったパッケージマネージャーを使い、膨大なLinuxのツールやアプリケーションを自由にインストールできます。Webサーバー(Apache, Nginx)やデータベース(MySQL, PostgreSQL)なども動作させられます。
- 高い互換性:
Linux向けのアプリケーションや開発ツール(Dockerなど)をそのまま利用でき、本番環境がLinuxの場合に開発環境を限りなく近づけることができます。
- パフォーマンス:
Linuxファイルシステム内の処理は非常に高速です。コンパイルや大規模なファイルの処理などでその真価を発揮します。
- セットアップがやや複雑:
Git Bashに比べると、有効化やディストリビューションのインストールなど、初期設定に手間がかかります。
- リソース消費量が多い:
仮想マシンに近い形で動作するため、メモリやCPUの消費量はGit Bashよりも多くなります。
- Windowsファイルとの連携:
WSL内のLinuxからWindowsのファイル(/mnt/c/
など)にアクセスすると、パフォーマンスが低下する傾向があります。
Git Bashの特徴
- 手軽さ:
Git for Windowsをインストールするだけで利用でき、非常に軽量です。
- Windowsとの親和性:
Windowsのファイルシステム上で直接動作するため、ファイルのパス指定などが直感的で、パフォーマンスの低下もありません。
- Gitに最適化:
もともとGitを使うために作られているため、Gitの操作に必要なコマンドは一通り揃っており、シンプルにバージョン管理をしたい場合には十分です。
- 機能の制限:
あくまでエミュレーターなので、使えるUNIXコマンドは限定的です。apt
のようなパッケージマネージャーは使えず、新しいツールを自由に追加することはできません。
- 本格的な開発には不向き:
Linuxの豊富な開発ツールやライブラリを利用することができないため、複雑なWebアプリケーション開発などには向いていません。
- シェルスクリプトの互換性:
一部の複雑なシェルスクリプトは、完全なLinux環境と挙動が異なる場合があります。
【ハンズオン】使ってみよう
理屈がわかったところで、実際にツールをインストールしてみましょう。どちらも数ステップで簡単に導入できます。
WSLの導入方法
現在のWindowsでは、WSLの導入が驚くほど簡単になっています。管理者権限のターミナルから、たった一つのコマンドを実行するだけです。
- 管理者としてターミナルを開く
スタートボタンを右クリックし、「ターミナル (管理者)」または「Windows PowerShell (管理者)」を選択します。
「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」と表示されたら、「はい」をクリックします。

- インストールコマンドを実行
開いたターミナルに、以下のコマンドをコピー&ペーストして、Enterキーを押します。
wsl --install
このコマンドが、WSLを有効化し、デフォルトのLinuxディストリビューションである「Ubuntu」のダウンロードとインストールまで、すべて自動で行ってくれます。

- PCを再起動
インストールが完了したら、PCを再起動するように促されるので、再起動します。
- 初期設定を行う
再起動後、Ubuntuのターミナルが自動で起動し、初期設定が始まります。
Linux環境で使うユーザー名とパスワードを設定するように求められるので、入力してください。
(このパスワードは、sudo
コマンドなどで使う重要なものなので、忘れないようにしましょう)
Git Bashの導入方法
Git Bashは、「Git for Windows」というパッケージに含まれています。以下の手順でインストールしましょう。
- 公式サイトにアクセス
まず、Git for Windowsの公式サイトにアクセスします。
- インストーラーをダウンロード
トップページにある「Download」ボタンをクリックして、インストーラーをダウンロードします。

- インストーラーを実行
ダウンロードしたファイルを実行します。基本的に、すべてデフォルト設定のまま「Next」を押し続けて問題ありません。途中で初期ブランチ名をmain
に変更するかどうかなど、いくつか質問されますが、よく分からなければそのままで大丈夫です。
公式サイトも参照すると理解が深まると思います。

- インストール完了
インストールが終わったら、デスクトップやスタートメニューに「Git Bash」のアイコンが追加されます。これをクリックすれば、いつでもGit Bashを起動できます。
結論
結局、どちらが良いという話ではなく、あなたの目的に合わせて選ぶのが最適です。
- 主な目的がGitのバージョン管理である。
- Windowsネイティブな開発が中心で、ちょっとしたUNIXコマンド(
ls
,rm
,grep
など)を使いたい。 - とにかく手軽に、素早く環境を構築したい。
- Web開発など、本番環境がLinuxサーバーである。
- Dockerコンテナを使いたい。
- Linuxの豊富なコマンドやツール、プログラミング言語環境をフル活用したい。
- 本格的なクロスプラットフォーム開発を行いたい。
まとめ
今回ご紹介したのは、本格的な開発ならWSL、Gitの手軽さを求めるならGit Bashという、それぞれのツールの明確な役割分担です。
最近の開発トレンドでは、Dockerの利用やバックエンド開発でLinux環境が求められることが多いため、本格的な開発を行うならWSLの利用が強く推奨されます。 一方で、Gitの操作や簡単なコマンド実行が目的なら、Git Bashの手軽さは依然として大きな魅力です。
この記事を参考に、あなたの目的に合った最高の相棒を選んで、快適な開発ライフをスタートさせましょう!