現在クラウドネイティブ技術が発展する中で、様々なアプリケーションの基盤としてKubernetesを中心としたプラットフォームが重要な役割を果たしています。
特に OpenShift、Rancher、VMware Tanzu などのソリューションは、企業のKubernetes環境を支える主要な選択肢として注目されています。
本記事では、それぞれの特徴や違いを分かりやすく解説します。
1. OpenShift(オープンシフト)とは?
概要
OpenShift は Red Hat が提供する エンタープライズ向けの Kubernetes プラットフォーム です。
Kubernetes の上に独自の管理機能を加えた「Red Hat OpenShift Container Platform」が代表的なソリューションです。
特徴
- エンタープライズ向けの機能が充実
OpenShift は Kubernetes をベースにしつつ、開発者や運用者向けのツールが豊富に用意されています。 - Red Hat Enterprise Linux(RHEL)との親和性
OpenShift は Red Hat Enterprise Linux CoreOS(RHCOS) を標準OSとして採用しており、Red Hat のエコシステムと深く統合されています。 - セキュリティとポリシー管理が強化
デフォルトで Role-Based Access Control(RBAC)やセキュリティ強化 の仕組みが組み込まれており、企業向けのコンプライアンス要件を満たしやすくなっています。 - 管理コンソールが充実
Web UI や CLI を使って直感的に Kubernetes クラスタを管理でき、開発者と運用チームの負担を軽減します。
こんな人におすすめ
- エンタープライズ向けの本番環境で Kubernetes を運用したい
- セキュリティやサポートが充実した Kubernetes 環境を構築したい
- Red Hat のエコシステムを活用したい
2. Rancher(ランチャー)とは?
概要
Rancher は SUSE が提供する マルチクラウド対応の Kubernetes 管理プラットフォーム です。
Kubernetes クラスタの統合管理や、オンプレミス・クラウド環境を問わず Kubernetes を一元的に運用できる点が強みです。
特徴
- 異なる Kubernetes クラスタを一元管理
RKE2と呼ばれるKubernetesのディストリビューションをベースとしてクラスタ管理やAWS EKS・Azure AKS・Google GKE などの マネージドKubernetes も統合管理できます。 - 軽量で導入が容易
Rancher は 比較的軽量なアーキテクチャ で、シンプルに Kubernetes 環境を構築できます。
将来的にマルチクラスタ管理を視野に入れた、小規模な状態からの導入をしやすいのも特徴です。 - エッジコンピューティングに最適
Rancher を提供しているSUSEは、軽量な Kubernetes ディストリビューションである K3s の開発元でもあります。
マルチクラスタ管理が基本となるエッジコンピューティングや IoT での Kubernetes 運用にも強みを持っています。 - GUIベースのシンプルな管理
Kubernetes の運用を GUI でシンプルに行いたい場合、Rancher は適した選択肢となります。
こんな人におすすめ
- 複数の Kubernetes クラスタを統合管理したい
- シンプルで軽量な Kubernetes 運用を目指したい
- エッジコンピューティングや IoT 向けの Kubernetes を利用したい
3. VMware Tanzu(タンズ)とは?
概要
VMware Tanzu は VMware が提供する Kubernetes ベースのプラットフォーム です。
従来の VMware vSphere 環境と Kubernetes を統合 することで、仮想マシンとコンテナの両方を管理しやすくするのが特徴です。
特徴
- VMware vSphere との統合が強力
Tanzu は vSphere を利用する企業にとって Kubernetes を既存インフラに統合しやすい のが最大のメリットです。
VMware の運用管理スキルを持つチームにとって、導入のハードルが低くなります。 - Tanzu Kubernetes Grid(TKG)
Tanzu は Tanzu Kubernetes Grid(TKG) という Kubernetes ディストリビューションを提供しており、オンプレミス・クラウド両方で統一された運用が可能です。 - Kubernetes を仮想マシン環境と併用できる
Tanzu は 仮想マシンとコンテナのハイブリッド環境 を構築するのに適しており、段階的なクラウドネイティブ化を進める企業にとって魅力的な選択肢です。
こんな人におすすめ
- VMware vSphere をすでに利用している
- 仮想マシンとコンテナを統合的に管理したい
まとめ
どのプラットフォームも Kubernetes を活用したコンテナ運用を支援しますが、それぞれ得意とする領域が異なります。
- OpenShift → エンタープライズ向け Kubernetes、Red Hat 製品と統合
- Rancher → マルチクラウド対応、軽量で導入が容易
- VMware Tanzu → vSphere と統合、仮想マシンと Kubernetes を併用
今回は主要な3つのKubernetes管理プラットフォームの概要と特徴について記載しましたが、自社の環境や運用ニーズに合わせてプラットフォームの選定の一助となれば幸いです。