Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の概要を知る
Red Hat社が提供する商用Linuxディストリビューションです。全世界で非常に多くの導入実績があり、日本でも多くの企業で採用されています。
RHELは、Fedora(フェドラ)とよばれるコミュニティの成果物を利用しています。Fedora自体は、無償のLinux OSですが、Fedoraで採用されている機能の改良、バックポート、バグ修正などを行った成果物が有償のLinuxである「RHEL」としてRed Hat社から提供されています。
RHELもSUSEと同様に、コアとなるRHEL以外に、いくつかの製品があり、HA機能を提供する「High-Availabilityアドオン」や、仮想化基盤ソフトウェアの「Red Hat Enterprise Virtualization」、分散ストレージを提供する「Red Hat Gluster Storage」と「Red Hat Ceph Storage」、さらに、クラウド基盤ソフトウェアとして、「Red Hat OpenStack Platform」(通称、RHOSP)などがあります。
有償ですので、サブスクリプションを購入して利用します。SUSE同様に、ベンダーとの繋がりも古く、ハードウェアベンダー、ソフトウェアベンダーと幅広くアライアンスを締結しています。
Red Hat Enterprise Linux互換OSの概要を知る
「Red Hat互換OS」と呼ばれるLinux OSがあります。Red Hat社が提供するRHELのソースコードを元に、RHELと高い互換性を持つLinuxディストリビューションです。
代表的なものにCentOS(セントオーエス)や、科学技術計算サーバーで利用されるScientific Linux(サイエンティフィック・リナックス)(通称、SL)などがあります。CentOSやSLは、無料でダウンロードして利用することができますが、ベンダーの保守サポートはありません。
無償で安定したRHEL互換が利用できるということから、Webフロントエンドサーバーや、科学技術計算用のクラスター(HPCクラスター)、Hadoop(ハドゥープ)と呼ばれるビッグデータ分析基盤ソフトウェアを駆使したクラスターの基盤OSとして広く利用されています。
また、ハイパーバイザー型の仮想化ソフトウェアとして利用することもできますし、最近話題のコンテナ管理ソフトウェアのDockerも稼働します。また、OpenStackなどのクラウド基盤ソフトウェアも稼働させることができます。
少し宣伝になりますが、筆者は、CentOS 7 の新機能や、自動化の手順、CentOS 7をベースにしたHadoopや分散ストレージの構築手順、使用法について記した書籍「CentOS 7実践ガイド」を出しています。従来のCentOS 6に比べて変更点も多いCentOS 7の管理手法も具体的に掲載していますので、拙著ながら、Red Hat互換OSを検討する際の参考にしていただけると幸いです。
書籍「CentOS 7実践ガイド」(古賀 政純 著)
https://www.amazon.co.jp/dp/484433753X/ref=cm_sw_r_tw_awdo_x_K5rZxbNTA2B80
RHEL 7のリリース情報を確認する
RHELの場合も、SLESやUbuntuと同様に、リリースノートを確認します。RHEL 7の場合は、7.1、7.2などのバージョン毎にリリースノートが用意され、インストール用のisoイメージが提供されます。
リリースノートには、そのLinux OSに関する基本的な新機能の情報や制限事項などが凝縮されて掲載されていますので、すこし骨の折れる作業かもしれませんが、事前に確認しておいてください。以下に、RHELのドキュメント入手先のURLを示します。
RHELのドキュメント入手先:
https://access.redhat.com/documentation/en/red-hat-enterprise-linux/
上記URLに記載されているOSのリリースノートから、ある程度の機能拡張やサポート情報が得られますが、具体的なサーバー機種やストレージ等のハードウェア機器が正式にサポートされているかどうかをハードウェアベンダーのサイトで必ず確認しておく必要があります。
サードパーティ製のミドルウェアやアプリケーション等のOSより上位層で稼動するソフトウェアについては、それらのミドルウェアやアプリケーションを提供するベンダーのWebページで情報を確認する必要があります。
以上で、主なLinuxディストリビューションについての概要や、確認すべき情報源などを簡単に説明しました。まずは、Linuxディストリビューションの種類、製品群、ディストリビューションごとの特徴、ハードウェアベンダーから提供されるLinux OSに関するWebサイトなどから情報を収集してみてください。
リリースノートは、かなりの分量がありますし、英語ですので読むのがつらいかもしれません。しかし、新機能や廃止された機能、サポートされる機器などの情報をリリースノートやベンダーのWebサイトで確認しておかないと、エンタープライズ向けのIT基盤導入においては、稼働できないシステムを構成するおそれもあります。
Linuxシステムを検討する場合は、導入前にリリースノートや本ブログでご紹介した情報を参照し、最新のLinuxディストリビューションや周辺製品群の特徴、雰囲気をつかむようにしてください。
次回は、具体的なシステム要件をもとに、ハードウェア、OS、オープンソースソフトウェアなどを構成する際に必要とされる基礎知識や留意点などについてご紹介します。
【筆者プロフィール】
古賀政純(こが・まさずみ)
日本ヒューレット・パッカード株式会社
オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト
兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバーのSE及びスーパーコンピューターの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国ヒューレット・パッカードからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。
現在は、日本ヒューレット・パッカードにて、Hadoop、Spark、Docker、OpenStack、Linux、FreeBSDなどのサーバー基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。日本ヒューレット・パッカードが認定するオープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストとして、メディアでの連載記事執筆、講演活動なども行っている。Red Hat Certified Virtualization Administrator, Novell Certified Linux Professional, Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack, Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「Mesos実践ガイド」「Docker 実践ガイド」「CentOS 7実践ガイド」「OpenStack 実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード。