Webサービスやアプリの開発現場で、「ここにハンバーガーメニューを置こう」といった会話を耳にしたことはないでしょうか。
「ハンバーガー」「ミートボール」「ケバブ」「ワッフル」「弁当箱」。おいしそうなランチのような名前が並んでいますが、これらは今のUIデザインに欠かせない「メニューアイコン」の俗称です。
スマートフォンの狭い画面にパソコンに準じた多くの情報を盛り込むために、これらのアイコンは「要素を隠すための魔法の箱」として多用されています。しかし、これらは便利であると同時に、使い方を間違えるとプロダクトの使い勝手を下げる「劇薬」でもあります。
今回は、それぞれのアイコンの暗黙的ルールと、メニューを隠すことの代償について紐解いていきます。
4つのメニューアイコンと意味
これらのアイコンは、どれも「クリック(タップ)すると何かメニューが開く」という点では同じですが、使われる文脈が異なります。
1. 三本線
- 名称、呼称: menu、ハンバーガーメニュー、…
- 役割: グローバルナビゲーション(アプリケーション全体に関わる主要なメニュー)
- 配置: 主に画面の左上(または右上)
どの画面にいてもアクセスできる、プロダクトの根幹となるナビゲーションを隠すために使われます。
アイコンが三本線ではなく、二本線や、四本線の場合もあります。同様の役割で、三本線ではなくサイドバーを表すアイコンが配置されている場合もあります。


2. 横の三点リーダー
- 名称、呼称: ellipsis horizon、more horizon、overflow menu、水平の三点リーダー、ミートボールメニュー、…
- 役割: 画面全体や、要素に対する追加のアクション
- 配置: 画面の右上や、要素の末尾など
文章の最後の「……(続く、省略されている)」と意味合いも形状も同じで、「この行(アイテム)に対して、編集・削除・共有などの操作」(コンテキストメニュー)や、「この画面に関するその他の操作」を示します。
「削除」操作は、誤操作を防ぐために、あえてコンテキストメニューに入れて隠す場合もあります。


3. 縦の三点リーダー
- 名称、呼称: ellipsis vertical、more vertical、overflow menu、垂直の三点リーダー、ケバブメニュー、…
- 役割: 「横の三点リーダー」と同様
- 配置: 「横の三点リーダー」と同様
「縦」に並んだ点が、展開するアクションメニュー(メニューリスト)を想像させる形状です。
Googleのプロダクトにて標準的に利用されています。
「横の三点リーダー」と「縦の三点リーダー」は同様の役割で、同じサービス内で共存、使い分けるケースは少ないです。


4. 九つの点
- 名称、呼称: Apps、launcher、launchpad、ワッフルメニュー、弁当箱メニュー、…
- 役割: 別のアプリケーションや、独立したモジュールへの切り替え
- 配置: 画面の左上、右上など
ハンバーガーメニューがアプリケーション内のグローバルメニューなのに対して、ワッフルメニューは、現在のアプリケーション以外に切り替える(起動する)メニューに使われます。
現在のコンテキストを離れ、全く別の機能群にジャンプするための「ハブ」として機能します。

現時点では、これらの「暗黙のルール」が主流となっており、メニューアイコンを選ぶ際には、これらを踏まえるのがユーザーのためにも無難です。
メニューを隠すことの代償
これらのアイコンを使えば、どんなに複雑な機能でも小さなボタンの中に押し込むことができます。画面はスッキリと美しくなり、一見するとデザインが洗練されたように感じます。
しかし、UIデザインにおいて「隠す」ことには代償が伴います。
認知心理学の分野やUXデザインにおいては「発見可能性(Discoverability)」という言葉が使われます。英語のことわざに “Out of sight, out of mind”(見えなければ、忘れ去られる)とあるように、ユーザーは「画面に見えていない機能」はないものとして扱います。
メニューアイコンの中に機能を隠すということは、以下の2つの認知的負荷をユーザーに強いることになります。
- 推測の負荷: 「このアイコンを押せば、自分が求めている機能があるはずだ」とユーザー自身に推測させる必要がある。
- 操作の負荷: 目的の機能にたどり着くまでに、必ず「メニューを開く」という余分な1クリック(タップ)が発生する。
「画面をスッキリさせたい」という開発者側の都合で作られたハンバーガーメニューの奥底に、プロダクトにとって重要な機能(リンク)を隠してしまった結果、ユーザビリティや、ビジネス的な成果の悪化を招くこともあります。
見えるメニューも試す
「隠すことの代償」を軽減する具体策としては、例えばモバイルアプリでは、ボトムナビゲーション(タブバー)(見えるメニュー)に主たる項目を配置しハンバーガーメニュー内(見えないメニュー)にそれ以外の項目を並べることを試すとよいでしょう。
同様に、三点リーダーの場合も何を隠すのか、隠さないのか、よく検討することが大切です。

まとめ:アイコンを「ガラクタ箱」にしないために
ハンバーガーメニュー、三点リーダーメニュー。これらは限られた画面領域を有効活用するための素晴らしい発明です。しかし、これらを「画面に収まりきらなかった機能をとりあえず放り込んでおくガラクタ箱」として使ってはいけません。モバイル用、デスクトップ用ともに。
UIを設計する際、アイコンで隠す前に、まず「情報設計(IA:Information Architecture)」から見直す必要があります。
メニューアイコンは「デザインの魔法」ではなく、単に「整理のための引き出し」と捉えたほうがよいでしょう。内容、役割、頻度、数、ラベルなど、項目を論理的に整理することが、使いやすいプロダクトを生み出すための第一歩となります。
余談:「食べ物の呼び名(スラング)」の歴史
「三本線」や「横の三点リーダー」のアイコン自体は古くからありましたが、それらが「食べ物の名前」で呼ばれるようになったのは、スマートフォンが普及して画面の省略化が進んだ2010年代以降のことです。デザイナーたちの「連想ゲーム」で以下のように名付けられていったようです。
ハンバーガー
iPhoneの登場後、Facebookなどの人気アプリが画面領域を節約するために「三本線」のアイコンでメニューを隠すUIを採用しました。この時、アイコンが爆発的に普及し、デザイナーや開発者の間で「ハンバーガー」と呼ばれ始め、UIデザインにおける最初にして最大の食べ物スラングとして定着しました。
ワッフル / 弁当箱
Googleが「9つの点」のランチャーを大々的に導入。すでに「ハンバーガー」という食べ物スラングが定着していた界隈で、「じゃあ、あの四角い格子状のやつはワッフルだ」「いや、おかずが詰まったBento Box(弁当箱)だ」と呼ばれるように。
ケバブ
AndroidのMaterial Designにて標準化された「縦の3つの点」。「ハンバーガーがあるなら、肉が縦に並んでいるのは『ケバブ』だろう」というジョークが生まれました。
ミートボール
ケバブ(縦)という呼び名に対して、昔から使われていた「横の3つの点」を呼び分ける必要が出てきました。「縦が串焼き(ケバブ)なら、お皿に横に転がっている肉団子だから『ミートボール』にしよう」という、後追いの連想ゲーム。
… UI界隈でも、どこまでこれらの俗称が通じるかは不明ですが …。
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